お兄ちゃんは悪魔サマ



「朝早くから悪いな」



俺の目の前には悠哉、尚哉、そして紹介して貰った紗香と言う悪魔の少女。

驚いた事にこの少女、魔界に行けるらしい……


話は悠哉から聞いた。
そして可能性があるならと俺は危険を顧みず、魔界に行く事を決めた。

尚哉も2人ともが助かる可能性があるなら、という事で承諾してくれた。




「2人とも俺のいない間、唯を頼む。アイツは自ら命を絶つ事だけはしないと言いきった。それは信じていい。俺は絶対にその日までには帰ってくるから」

「陵さん……やはり俺らは行けないんですか?」

「無理だ。他の悪魔や魔物に見つかった時点でどうなるか解らない。生きて帰れない可能性が高すぎる。唯はそんな事は望んでない」




俺がそう言いきると、悠哉は諦めたのか黙り込んでしまった。

悪いな……お前らには俺がいなくなった時、唯の傍にいて欲しいんだ。


今回の決意がどう転ぶかなんて、まったく解らねぇからな……




「えっと、紗香だっけ。迷惑かけて悪いけど頼む」

「はい。私も唯さんには幸せになって欲しいので……。悠哉さんと尚哉さんは離れてて下さい」



悠哉と尚哉が離れたのを確認すると、彩香は胸の前で左右の手のひらを合わせるようにして、目と閉じて何かを念じ始めた。

そこから黒い光が現れると、周りの空気を巻き込むようにどんどんと光は膨れ上がっていく。




「じゃあな」




その黒い光の塊が、直径50センチほどになったのを見計らって俺はそこに飛び込んだ。



 
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