お兄ちゃんは悪魔サマ
「あなたは……?」
「私の事より、まずこの状況をどうにかしましょう」
そう言うと綺麗な悪魔さんは、先輩と生徒会長の頭に手をあてて何かを呟いた。
暫くすると片手でお兄ちゃんを抱え上げ、反対側の手で私を抱えた。
「きゃっ……」
「大丈夫です。動かないで」
体が浮いて、学校の屋上から離れていく。
気がつくと、周りの時間は流れを取り戻していた。
お兄ちゃんはバレたら、すぐに居なくなっちゃうって言ってた……
もしかして、この悪魔さんに連れていかれるんじゃ!?
そんな不安に見舞われながらも、空の上では為す術もなくジッとしているしかなかった。
しばらくして降り立ったのは私の家。まだ私の姿のままのお兄ちゃんをベッドに寝かせる。
「あの、お兄ちゃんはどうなるんですか……?」
「クビ……ですね、本来は」
「本来は、って事は……」
「今回は特別です」
悪魔さんはにっこり笑った。
その笑顔に思わず安堵のため息を漏らす。
良かったぁ……
初めて会ったばかりなのに、何だかこの人は信用できる気がした。
だから、気になっていた事を聞いてみた。
「1つ聞いてもいいですか?もしクビになったら、転生出来ないって聞いたんですけど、本当ですか?」
「……少し違います。彼は既に転生できませんよ」
「え……?」
「悪魔の契約をした時点で、転生の権利は失っています」
「そんな……。クビになったらじゃないの?じゃあ、お兄ちゃんはもう……」
私は悪魔としての役割を果たせば、また転生できると思ってた。
思ってもみなかった返答に驚きとショックを隠せない……
「イグルス、余計な事は言わなくていい」
お兄ちゃんの声がして顔を向けると、お兄ちゃんは気がついていて、姿も元に戻っていた。
その顔が少し……怖かった。