お兄ちゃんは悪魔サマ



「唯!」




次の日の放課後、帰り支度をする私の元に先輩が現れた。

何でも尚哉くんの元に紗香ちゃんから連絡があって、明日皆が魔界から帰って来るとの事。




「明日……って何時ごろなんでしょうか」

「さぁ、さすがにそこまでは聞いてないな。どうかしたのか?」

「あ、いえ。何となく……」



明日、お父さんの所に行ってみる予定だった。
そして、出来ればお兄ちゃんが居ない時が良かったのだ。

お兄ちゃんは未だに両親の離婚の引き金になったのは、自分のせいだって思ってるから……




「唯?」

「あ……すみません、ちょっと考え事してて。明日の午前中は用事があるので、午後にでも先輩の家にお邪魔していいですか?」

「もちろん。ってどこに帰って来るかも解らないんだけどな」



そう苦笑いを浮かべる先輩に、少し……見惚れてしまった。

恋愛感情はもうない。
それははっきり言える。


それでも親身になって私を心配してくれる先輩や尚哉くんは、私にとって大切な人。
それこそお兄ちゃんと弟って感じかも!








自分は不幸なんだって思った。
お兄ちゃんの事も、自分の運命も……


でもここまで自分を想ってくれる人がいる。

いろんな人に支えられてここにいる。




こんな運命だからこそ、気づけた事がたくさんあった――



 
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