お兄ちゃんは悪魔サマ
「私、帰ります」
「でも義父さまに会いにいらっしゃったんですよね?今はお出掛けされてますが、すぐに戻られますよ」
「別に会いたい訳じゃ……」
その女性はジーッとこっちを見ていたかと思うと、私の手をむんずと掴んだ。
そして華奢な見た目からは想像出来ないような力で、私を引っ張って歩きだした。
「ちょ、ちょっと、何するんですか!!」
「悩む位なら会っていかれた方がよろしいですよ?」
「悩んでなんかいません!」
「……私にはそうは見えませんわ」
何故か反論出来なかった私はズルズルと引き摺られるように、これまた大きな客間に通された。
「執事がすぐにお茶をお持ち致します。紅茶でよろしかったかしら?」
「あ、はい。すみません……」
何か居心地悪い……
執事さんが運ん来たポットから、カップに紅茶を注ぐ女性。
その全てが優雅な動きで、いかにもお嬢様って感じだ。
「あの……不躾な質問だとは思うんですが、再婚するって聞いて嫌じゃなかったですか?」
「……お義父さまは母の為に再婚して下さったんです。ですから感謝こそすれど、嫌だなんてとんでもない」
……母の為?
お父さんが財産目当てで再婚とかじゃないの……?
そんな私の気持ちを見透かしたかのように、彼女は再婚に至るまでの経緯を話してくれた。