お兄ちゃんは悪魔サマ
話を要約すると、彼女の実の父親が事故で他界した時にお父さんが支えになったんだとか。
「うちの母とは高校時代の同級生だったんですって」
「……やっぱり私、帰ります」
「え?でも、もうすぐ……」
「確かにあなたのお母さんは、お父さんに救われたのかもしれない。でもそれは私達家族の犠牲の上に成り立った事」
目の前に居る彼女には何の罪もない事は、解ってる。
でも彼女の母親が居なければ、私達の家族はバラバラにならなくて済んだかもしれないと思ってしまう……
「唯さん……」
「せっかくお茶まで出して頂いたのに、すみません。私にはお父さんを許せそうにありません」
私は立ち上がると、彼女が止めるのも聞かずにドアを開けた。
すると、そこには今一番会いたくない人物が立っていた。
彼は、何とも複雑な表情を浮かべていた。
「……お父さん」
「唯……」
「立ち聞きなんて最低。二度と顔も見たくない」
目の前に突然現れたお父さんに戸惑いながらも、私は冷たく突き放し玄関に向かった。
何か言いたげだったけど、気にする余裕なんてなかった。
そして門を出た時に事件は起こった。
それはあっという間の出来事で、覚えているのは薄れゆく意識の中でお兄ちゃんを呼んだ事だけ――