お兄ちゃんは悪魔サマ
「…………?」
「…………ぇよ」
耳に聞き慣れない声が届き、靄がかかったような頭が少しずつ覚醒する。
瞼を上げた途端、飛び込んできた男達の姿。
私は後ろ手に縛られ、布か何かで猿轡をされており、壁に凭れかかるように座っていた。
ここは?私は……?
「気がついたみたいだぞ」
「ああ。さすがに何が何だか解んねぇって顔してんな」
「そりゃ、あんだけ手早く拐って来たんだからな」
目の前には黒い服に身を包んだ男が2人。
顔を隠す様子もない2人は、まだあどけなさが残る彼らは高校生にも見える。
そういえばお父さんの再婚相手の家に行って、帰ろうと門を出た時、いきなり誰かに捕まれた。
すぐに口にも何かが当てられて……
「これで一千万だとよ。世の中金があるトコには、あるんだな」
「ああ。さっさとコイツを引き渡して、ずらかりたいな」
誘拐?しかも一千万って……
自分の置かれている状況は何となく把握できた。
ただ、この部屋には窓がなく薄暗い。その為、どのくらいの時間が経っているのか見当もつかなかった。
残りの時間が解らない――
お兄ちゃんはもう帰って来たのかな?
結局、迎えには行けなかったな……