お兄ちゃんは悪魔サマ
聞きたい事があっても、喋ることすら出来ない現状ではどうしようもない。
私はとりあえず何か情報はないかと、周りを見回してみたり、男たちの話に耳を傾けたりしてみた。
解ったのは、私は人違いで誘拐された事。
そしてこいつ等はそれに気づいていない。
いかに雑な計画であるかが解る。
本来、誘拐されるはずだった人物。それは先ほどまで話をしていた彼女――東条 沙希(トウジョウ サキ)さんって名前だったみたい。
そう言えば名前すら聞かないままだったな……
「それにしてもまだ来ねぇのかよ。万が一サツとかにバレたらヤバくね?」
「大丈夫だろ。脅迫して金だけせしめたら、この女は消すらしいし」
……消す!?!?
ちょっと待って……。私が死ぬまで残り2日。
もしかして、このまま殺されるって事?
……死ぬって事はある程度、覚悟を決めたつもりだった。
でも、こんな形の最期だなんて……
急激に現実味を帯びる『死』というものに、私の足は自然と震えていた。
本当は死ぬ覚悟なんて出来たつもりでいただけなんだと、思い知らされる……
それに、先輩や尚哉君に伝えたい事があった。お母さんにも。
そして、何よりお兄ちゃんに――