お兄ちゃんは悪魔サマ
それから少しすると、男達の携帯が鳴り何やら話している様子。
「はぁっ!?嘘だろ?」
声をあらげる男を、もう1人が心配そうに覗き込んでいる。
私がここに連れて来られてから、それなりに時間は経ってる。
もし奴らの仲間が身代金要求の連絡を、東条邸にしていたら……
「おいっ!ちょっと、待て!!待てって……おい!」
「どうしたんだよ?」
「この女、東条沙希じゃねぇって……」
それを聞いた男が、私の目の前に立った。
そして、乱暴に私の言動を縛っていた布を剥ぎ取る。
口の中がカラカラ。喉渇いたな……
「お前、東条沙希じゃねぇって本当か?」
「本当よ。たまたまあの家を訪ねてただけ」
「……最悪だ」
それはこっちのセリフでしょ!
でも人違いと解った今、どうなっちゃうんだろ……
男達は、2人でこれからの身の振り方を話し込んでる様子。
何度か試してはいたけど、手を縛る縄はほどけそうにない。
「このまま逃げるか?」
「でも俺ら、コイツに顔見られてるぞ……」
「ヤる……か?」
何やら雲行きが怪しい……
でもこの時は逆に、今すぐ殺される事はないと妙に冷静で居られた。
そして再び男の携帯が鳴った。