お兄ちゃんは悪魔サマ
「お願いします!!僕たちも唯さんを助けたいんです」
俺の目の前では、悠哉と尚哉がお袋に頭を下げてる。
普通なら迷惑にしかならないだろうこんな朝早くに、俺の家を訪ねた目的は一つ。
親父の居場所を知る為に……
手がかりはこれしかないからだ。そこから、唯に繋がる道を探せるかどうかは解らないけど……
俺はこいつ等の横に、猫の姿で座っている。
お袋は気にもとめてないみたいだが。
「でも、唯の事は警察にお任せしてありますし……。それに、あなた達を危険な目に合わせる訳にはいきません」
お袋も心配で寝てないのか、目の下にはうっすら隈ができ、憔悴しているのが解る。
まぁ当たり前か……俺がいなくなってまだ数ヶ月。
残された娘までも、危険な目にあってんだからな……
「あ!俺、普通じゃないんで大丈夫……
ゴンッ
ってぇぇぇ!何すんだよ!!」
「尚哉は少し黙ってろ」
悠哉は痛そうなゲンコツを食らわせた後、お袋に向き合って再度、頭を下げた。
「詳しくは言えませんが、唯さんが危ないんです。早くしないと……」
「唯が危ないって、どういう事ですか?何故あなたはそんな事を……?」
「それは……」
悠哉はそこで言葉に詰まった。
こんな見て解る程に弱ったお袋に、追い討ちをかけるような事は出来ないんだろう。
お袋は悠哉から次の言葉が出てくるのを待っているように、ジッと悠哉を見つめている。
悠哉は視線を逸らしたまま、沈黙が続いた……