お兄ちゃんは悪魔サマ
しばらく黙って見ていたが、状況は進展しそうにない。
仕方ねぇな……
どうせ俺はもうすぐ消えるんだし、堂々と見張りはつけない宣言されたからいいだろ。
そう考えて、お袋の足元を抜けて家に入る。
「あ、ちょっと!」
さすがに、勝手に上がり込んだ猫には反応したお袋。
いきなり元の姿に戻るのもデリカシーがない気がする……
まずは猫の姿のままで話してみるか。
クルッとこちらを向いたお袋の正面に座り、その視線を捉える。
「お袋、驚かないで聞いてくれ」
「っ……!?な、何なの?猫が喋った……?」
気味が悪いものを見るかの様な目。当然かもしれないが、何気に傷つく……
気持ちを落ち着かせる為にふぅと深呼吸し、更に話しを続ける。
「信じらんねぇのも無理はないけど、俺は陵だ。今はこんな姿だけど」
「陵……?何の冗談?」
お袋は2,3歩後退りをする。
そして、そこに立っていた悠哉と軽くぶつかった。
ゆっくりと悠哉を見上げたお袋の顔は、怒ってるように見えた。
「あなたなの?」
「え……?」
「こんな、こんな性質の悪い悪戯……!!陵はもういないの!事故で亡くなったのよ!!」
俺の話し方がまずかったのか、猫の姿がいけなかったのか。
お袋は正気を失ったかのように、悠哉を責め出した。
見ている俺も辛くなるような、苦しげな表情を浮かべて……
陵の姿に戻るか……