お兄ちゃんは悪魔サマ
悠哉は困ったように、お袋とこちらを交互に見ている。
俺は人間の姿に戻ると、背を向けているお袋に声をかけた。
「悪戯じゃねぇよ。そいつは本当に唯を心配してるだけだ」
お袋は俺の声に反応してゆっくり振り向くと、そのまま固まった。
玄関先じゃマズイとお袋を居間へと連れていき、何度も何度も説明した。
納得してくれる迄に費やした時間は、約1時間……
「悠哉くんだったかしら?ごめんなさいね……。取り乱して、責めるような事を言ってしまって」
「いえ、お気になさらないで下さい。普通じゃあり得ない事ですから、混乱しても仕方ないと思います」
お袋はすっかり落ち着いたらしく、椅子から立ち上がり今からお茶を用意すると言う。
それを制止し、そんな時間はない事を告げた。
「悪いな……。親父の居場所を教えてくれ。唯は必ず助けるから」
「……陵とはまた会える?」
お袋の問いかけに、俺は静かに顔を横に振った。
唯が助かったなら、俺は消える。
それはどうしようもない現実で、逃れられない運命……
でも、もしも奇跡が起こったら。
起こったら――……