お兄ちゃんは悪魔サマ
「悠哉、話をして何になる?捜す事より話に時間を費やすメリットは?」
「……唯を捜す事を何より優先するなら、話す時間はもったいないかもしれない。でも、唯が見つかった後の事を考えるなら、今のうちに話を聞いておきたいんです」
「唯が見つかった後の事……?」
「はい」
何となく言いたい事は解った。
俺と悠哉は元より、尚哉も唯に協力すると言いながら実は唯を助ける為にここに居る。
唯の状況は解らないが、なりふり構わなければ唯を助けられる可能性は高い。
だが、イコールそれは俺がいなくなる事を意味する――
「唯の為……か?」
「そうですね。俺の為、でもありますが」
「お前の為?」
「唯がちゃんと前を向いて進めるように。そして新しい恋が出来るように……」
……唯がお前を選ぶのは癪に障るが、お前以外を選ぶのはもっと癇に障る気がする。
唯の命を助ける事ばかりを考えていたが、その後までは気が回らなかったな……
「あのさ、こうやってる時間の方が勿体ないんじゃね?とりあえず、どっか目立たなくて話せる場所に行こうぜ」
確かに。
今は東条邸の出入り口が見える少し離れた場所に隠れるように突っ立っているが……
男3人、かなり怪しいだろう。
「少しこの周囲を見て回ってくる。お前らはこの辺りで待っていてくれ。それから、尚哉は一度紗香に連絡を取ってみてくれるか?」
「りょーかいっ」
この場には3人しかいないが、実はイグルスに紗香、何と八城までもが唯を捜してくれている。
人(悪魔?)って解らないもんだな……と、しみじみと思った。