お兄ちゃんは悪魔サマ
「ん、いいだろ。じゃあ俺は行くな。帰って来なかったら、その時は頼むぞ」
真剣な眼差しで悠哉に言い聞かせる。(猫の姿だが)
そして寝ている尚哉の傍に行き、ボソリとお前も頼むな、とだけ言って部屋を後にした。
部屋を出て、一度屋敷を出る。
唯がいるのは、今居たこの建物じゃない。
この広大な敷地のどこかに、唯を監禁できるような場所があるはず……!!
エネルギーの事を考えるなら猫の姿のまま、歩いて行くのが一番良い。
人型だとそれだけでエネルギーは消耗するし、飛ぶ事だけはぜってぇしねぇ。
唯の気を感じられる今、焦る事はない。
何も、沖縄から北海道に行くわけじゃない。
広大な……といっても、所詮知れている。
優しく月明かりが照らす中、草木の中をゆっくりと、しかし着実に唯に向って進んでいく。
「陵……」
「……ん?何か今呼ばれたか?」
「陵、上です。上」
聞き覚えのある声に、見上げるとそこにはイグルスと八城、そして紗香まで居た。
「お前ら何でここに……?」
「あなたと同じですよ。唯さんを見つけたから来たんです」
「見つ……って唯の様子は?もう姿は見たのか!?」
「ええ。そこまで連れて行きましょう。あなたはもう、無駄なエネルギーは使わない方がいい」
俺は素直に、イグルスの言葉に甘える事にした。
先ほど少し補充されたみたいだが、それでも着実に減るのだから……