お兄ちゃんは悪魔サマ
「あれ……男たちが動いてますよ」
「動いてるって何だよ。解るように説明してくれ」
「唯さんを立ち上がらせて、出口に向かってます」
「外に出てくるのか……!?」
「多分、ですよね?八城さん」
紗香が八城に同意を求めるように見上げると、八城は顎に手を置き、何かを考えている様子。
こいつ等の秘密。
普通は悪魔にスカウトされて、認められれば悪魔になれる。
ただ、極々稀に魔王自らが悪魔へと導く事があるらしい。正確には魔王の分身が……らしいが。
それが八城と紗香だ。
どういう基準で、どういったきっかけで選ばれるのかは解らない。
魔王は、それには答えなかったからな。
そして生まれた悪魔は、特殊能力を手にする。その代償は……永遠。
イグルスみたいに目的を果たせなかった悪魔は、その時を生き続ける。
だけど、いざとなれば消滅する事は容易い。
エネルギーの補充をしないとか、ハンターに捕まれば良い訳だから。
他の悪魔と同様に、契約は交わすのだそうだ。だけど、こいつ等の契約は意味をなさない契約。形だけの契約。
例え目的を達成しようとも、消滅などしない。いや、出来ない。
エネルギーが極限まで減ると、強制的に補充される。
何故、魔王がこんな悪魔を作り出したのか。
解るのは、もう少し先の話――