お兄ちゃんは悪魔サマ
「出てくるぞ……」
八城の言葉に目を凝らす。
するとその倉庫から確かに、人が3人出て来るのが解った。
確認する限り、手に何か武器を持っているような事はない。
人目に付きにくいこの時間に、どこかに移動するつもりなんだろう。
その行動はこちらにとっては、好機以外の何ものでもない。
「唯を助け出す」
「……解りました。私がサポートします。八城と紗香さんは、周りの様子を注意して見ていて下さい」
俺は人型に戻ると、イグルスと共に唯の元へとそっと近づいた。
こういう時、浮かべるのは本当に楽だと思う。足音なんて気にする必要はないし、足場も関係ない。
「イグルス、とりあえず男をやつけよう。見た所、特に武器を手にしてる訳じゃないから、不意を突けば楽勝だろ」
「そうですね……。では陵は唯さんを拘束してる男を頼みます。私は、もう一人の男をどうにかしましょう」
そして俺とイグルスは目配せをした後、男たちへと向かった……
この時、運命の歯車が少しづつずれていた事に、俺は気づいてはいなかった……