お兄ちゃんは悪魔サマ
俺がその違和感に気づいたのは、陰から飛び出して唯に近づいた時だった……
さきにイグルスが飛び出し、そちらに男達が目を奪われてる間に俺が男の1人をぶっ飛ばす。
んで唯を確保する……と。
言っちゃあ何だが、丸腰の人間と悪魔のどちらが強いかなんて、比べるまでもない。
だから、唯の確保まではあっという間だった。
突然現れたイグルスに、男たちと唯は驚きのあまり目を見開いて凝視する。
そして動きがとまったその瞬間、唯を捕まえてる方の男に背後から近づき、首の後ろに手刀をくらわす。
ぐらりと体が揺れ、唯の方に倒れそうになる男を退かし、唯を引き寄せる。
ここまでの一連の動きは、まるでスローモーションの映像が流れるかの様に見えた。
「お兄ちゃん……?」
唯がこちらを見た瞬間、ありえない事態が起こっている事に気づいた俺……
カウントがおかしい……
カウントとは当然、唯の命のカウントである。
唯のその時は、今日の17時47分だ。
現在の時刻は3時前後。
まだ15時間近くの時間が、残されているはず……
しかし俺が見たのは……
『00:38』
そして、それは点滅をしながら凄い速さで減っていく。
今までに見た事のない状況に、俺は気が動転していた。
「唯さん!!危ないーーー!!!」
そう紗香の叫び声が聞こえた瞬間、乾いた銃声が3発、静寂が包む闇に響き渡った……