お兄ちゃんは悪魔サマ
俺の前に居た唯が何かに押される様に、俺の方へと倒れこんで来た。
それを受け止めようとするが、自分の体に感じる違和感がそれを許してはくれなかった……
悪魔だって痛みは感じる。
腹部に感じた強烈な痛みによって朦朧とする意識の中で、唯も打たれたのだと認識するのに時間はかからなかった。
「おに……ちゃ……」
「……唯、ごめ……」
俺は結局守ってやれなかったのだ。自分のすべてを賭けて、助けるつもりだったのに……
唯を助ける事もできず、自分もこのまま消えて行くのだろう。何と情けない事か……
でも、意識を手放しそうになった俺にある光景が飛び込んで来て、あまりのショックに一瞬痛みさえ忘れてそれを凝視した。
唯を受け止めようとして、一緒に後ろに倒れながら見た驚愕の光景……
それは、ライフル銃をこちらに構えたイグルスの姿……
どういう事だ……?
何故イグルスが……?
夢……?幻……?
倒れゆく俺達を見て、ニヤリと笑ったイグルス。
それを最後に、俺の意識は途切れた……