お兄ちゃんは悪魔サマ
*狂った歯車*
何故だ……?どうして……?
意識のないはずの頭で、繰り返される疑問。
あの時のイグルスの表情は、間違いなく俺たちに向けられたものだった……
優しくて、いつも頼りになったイグルス。それは作られたものだったのか?
いつから?最初から?
考えれば考えるほど、頭が痛くなる――っ!
もの凄い息苦しさを感じ、瞼を開ける。ガバッと起き上がり、胸に手を当てて落ち着くのを待つ。
少しして俺は周りを見渡し、状況把握を試みた。
どうやら、どこかの部屋のベッドに寝かされているようだ。
……俺、消滅してないのか?
……唯……唯はっ!?
自分の体の事さえ忘れて立ち上がろうとした。
だが、弱りまくっているであろう俺の体は、回復する兆しすらなく患部がズキズキと痛む。
あまりの痛さに、脂汗が滲むほどだった。
「まだ動ける訳がないだろう」
不意にかけられた声に、ビクッと体が反応する。
そこに居たのは、八城……
「どうしてお前が……?」
「ここは俺の家だからな。居て当然だろう」
「そう……か。それより唯は?唯は無事なのか!?」
「……無事……と言えるかは解らねぇが、生きてはいる」
無事とは言えない……
撃たれたのであれば、当然無事では済まないはずだ。
それでも、妙に歯切れの悪い八城の言い方が気になる。
「危ないのか……?」
八城は言葉にはせず、ただ頷いた。