お兄ちゃんは悪魔サマ
「聞きたい事がたくさんある……」
八城はポケットから煙草を取り出し、吸い始めた。
そしてそのままベッドの脇に腰掛ける。
「解る事なら答えてやるよ」
「まずは……あの時の状況を教えてくれ」
八城は煙を吐き出すと、俺と唯が打たれた時の事をゆっくりと話しだした。
俺が男の1人を気絶させた時、それ以上のスピードでイグルスはもう1人の男を倒していた。
そしてどこからかライフル銃を取り出し、それを止めようと近づいた八城と彩香に1発ずつ銃を放った。
2人がたじろいだ瞬間、唯と俺に向かって3発目の銃を発射させた……
弾は唯の背中を突き抜け、俺の腹部にも致命傷を与えた……という事らしい。
「俺は何故助かった……?あの時エネルギー残量は少なかったし、そこに来てあの怪我。普通に考えて助かるとは思えねぇ」
「それは、偶然が生んだ奇跡……とでも言っておくか」
「どういう事だ?」
「唯はお前に覆いかぶさるように倒れ込んだ。もちろん、意識はもうなかっただろうな。だが、唯とお前の唇が触れたんだよ」
例え唯の意識がなかったとしても、俺にとってはそれでエネルギーの補充がされたって事か……
「それでも全然足りねぇだろうが、お前は消滅を免れたって訳だ」
「唯……」
何だよ……結局助けるつもりで助けられてるなんて、とことん救いようがねぇダメ兄貴じゃねぇか……
俺は力の入らない手をこれでもかと握りしめ、唇も噛み締めた。
そうでもしないと、悔しさややりきれなさ等から涙が零れてしまいそうだったから……