お兄ちゃんは悪魔サマ
でも、こんな所で後悔している場合じゃない。
「八城、唯は生きているのに俺は消滅してない。これは何を意味する?」
「……さぁな。俺にも魔王の考えてる事は解らねぇ。もしかしたらこのまま唯は死んじまうのかもしれない。もしくは運命だった時間が過ぎたところで、お前が消滅するかもしれない」
「そうか……」
俺は部屋にあるであろう、時計を探した。イグルスの部屋は、モノトーンを基調としたシンプルな部屋だった。
この部屋には、至る所に赤と黒が使われている。
何となく八城らしいなと思いながら、目当ての掛け時計を見つけて時間を確認した。
「12時42分……ずいぶん意識飛ばしてたんだな」
「ああ。それだけ酷い怪我じゃ仕方ねぇ」
「……悠哉と尚哉は?」
「あいつ等は、病院でずっと唯に付き添っている。といっても唯は集中治療室にいるから、ただ待ってるだけだが」
今回の事は、俺の焦った行動が招いちまったのか……?
それともイグルスがその機を虎視眈々と狙っていた……?
「八城、イグルスはどうした?」
「逃げた。アイツ、何か隠してやがる。ライフル銃はどこからか持ち出したというより、イグルスが具現化させた様に見えた」
「具現化……」
俺は、イグルスにそんな能力があった事すら知らねぇ。
というか、よくよく考えてみれば俺はイグルスの事なんて、何も知らないも同然なんだな……
でも、何も理由ナシにそんな事をするとは思えない。
ただ殺すだけじゃ、イグルスにメリットはない。
何か理由があるはずだ。