お兄ちゃんは悪魔サマ



「お前、唯の所に行かなくてもいいのか……?」

「行きたいに決まってるさ。すげぇ行きたい。今すぐ飛んで行きたい。でも……どんな顔して会えばいいのか解らねぇんだ」

「守れなかったからか?」

「……ああ」



俺の答えに、八城がフッと笑った。

それは嫌みたっぷりの、せせら笑いだった。




「今更何言ってんだよ?もう唯は撃たれた。それは変えようのない事実で、時は戻せない」

「解ってる……」

「今のお前を見たら、唯は何て言うだろうな。命がけで守ろうとしたのはお前だけじゃない。唯だって、命がけでお前を守ろうとしたんだろ?それなのにお前ときたら、女みたいにウジウジ悩むだけ」




痛いところを突いてくる。

結局俺は怖いだけなんだ……
唯が病院で横たわる姿を見て、自分の不甲斐なさを突きつけられるのが。


守ると言っておきながら、このザマかよ?

誰かからそう言われそうな気がして……




「もっと単純に考えればいいんじゃねぇのか?」

「単純に?」

「お前は唯に会いたい。唯だって同じだろ?だったら会ってやるべきだ。その後にどんな結末が待っていようとも、会わなければ絶対に後悔する」





八城の力強い言葉が、俺の中のモヤモヤを打ち砕いてくれた様な気がした。


そうだ……

もしかしたら、俺はもうすぐ消えてしまうかもしれない。
それならば、残された時間で出来る事をするべきなんじゃないのか?



 
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