お兄ちゃんは悪魔サマ
「……貴様、ここまで親切にしてやってんのに失礼だぞ」
「あ……、人の思考が読めるんだっけ。えげつねぇ能力。…………って、それでイグルスの考えを読み取るとか!」
「無理だな」
良い考えだと思ったのも束の間、あっさり八城に否定された。
まぁ読めてるなら、あんな事が起こる前に止めてるか……
「お前みたいな単純バカならまだしも、イグルスは伊達に長く悪魔をやってねぇ。アイツの思考は一度も読み取れなかったさ」
「……大した能力じゃないって事だな?」
「このまま消えろ」
そう言って立ち去ろうとした八城に、慌てて謝罪する。いや、口先だけだけど。
だってコイツがいねぇと困る。今の俺は1人じゃ動けない。
「はぁ……仕方ねぇな。とりあえず行くぞ。このままここで話してたって埒があかねぇだろ」
「そうだな。頼む」
「じゃあ、何か小さいのになれ。仮にも忍び込むんだからな。小さけりゃ小さいほどいい」
俺は悩んだ挙句、以前一度だけ変身した事のあるハムスターになった。
八城は一旦部屋から消え、何故だか白衣を身にまとって戻って来た。そして俺をひょいと掴むと、白衣のポケットに放り込まれた。
マンションの屋上に向かうと、おもむろにそこから飛び立つ八城。
唯……、今から会いに行く。
こんな駄目な兄貴だけど、お前も会いたいって思ってくれてるか……?
こんな、今にも消えそうな俺に何が出来るか解らないけど、唯の為に出来る事があるなら何でもしてやる……