お兄ちゃんは悪魔サマ
誰もいない病室。
静かな部屋に響き渡る機械音。
そして酸素マスクをつけ、青白い顔のまま横たわる唯。
何とも痛々しい……
八城は俺をポケットから取り出すと、唯のすぐ傍に置いた。
本当は元の姿に戻りたいところだが、こっちの方が痛みは幾分かマシだから、このままで許してくれな。
心の中でそう呟いて、唯の頬に軽くキスをする。
ハムスターじゃ絵にならない?そんなの知った事か。
俺にはまだやらなきゃならない事がある。なりふりなんて構ってられねぇ……
俺は八城にも聞こえない様に、唯の耳に向って話しかけた。
意識はなくても、きっと頭の隅に残ってくれている事を願って……
「唯……出来そこないの兄ちゃんですまない。結局お前を守ってやれなかったな……。でもまだ俺は消えちゃいないし、唯も死んでない。なぁ唯、運命って何だろうな……。一生懸命考えてみたけど、俺にはよく解らねぇんだ」
そこまで話した所で、ふと唯の命のカウントがどうなっているのかが気になって確認してみる。
だけど、俺が見る限りじゃ何も見えない……
「なぁ八城」
「あ?もう終わったのか?」
「いや……お前にはさ、唯の命のカウントって見えるか?」
「……見えねぇよ」
「どういう事だ……?」
八城は、何だか妙に落ち着きはらっているように見えた。
コイツは俺とは比べもんにならない程の時を過ごして来てる訳だから、こういった経験もあるって事か?
「八城……お前、何か知ってるのか?」
そう八城の方を向いて、疑問を口にした時だった。
そこに探していたヤツが急に姿を現したんだ……
「私が知っていますよ、陵」
「イグルス……」