お兄ちゃんは悪魔サマ
「……じゃあ俺はここで用なしだな。後はてめぇでケリつけな」
八城は俺をベッドから持ち上げ、イグルスの方へと連れて行ってくれた。
コイツ……案外いいヤツだったんだな。
「案外は余計だ、よ・け・い」
「お前、最後まで盗み聞きかよ」
「そう思うなら、もうちょっと賢くなれ」
「余計なお世話だ!」
ったく、素直じゃねぇヤツ。
でも、少しは感謝してやる。
口では素直に言えねぇけど……
「あのさ、おせっかいなお前にもう一つだけ」
「まだ何かあんのかよ……」
俺は、唯以外にどうしても伝えたかった言伝てを八城に託した。
時計を確認すると、すでに2時を回っている。
直接伝えるには時間が足りない。
俺は、八城の耳元でボソボソとそれを話す。
ふぅっと溜息をつき、しょうがねぇなぁと言った八城。
うん、やっぱお前いいヤツ。
「頼んだぞ」
「ああ」
「待たせたな、イグルス」
さっきから無表情で、俺たちのやり取りを見ていたイグルス。
少し乱暴に俺を掴むと、八城に背を向けて歩き出した。
「おい、イグルス」
「…………」
「お前も素直になれば?あの行動はちょっといただけないが、お前なりに悩んで出した結論なんだろ?」
「……黙れ。貴様には関係ない」
突如イグルスに声をかけた八城の言葉。
俺には、このやり取りの意味が解らなかった。それを考える余裕はなかったんだ。
運命の時は近づいていた――