お兄ちゃんは悪魔サマ
イグルスは自分の手を前に翳(カザ)し、俺の目の前で銃を具現化させた。
あの時見たライフル銃ではなく、もっと小型のピストルだ。
それも何故か2丁……
「さすがに、手負いで無抵抗なあなたをこのまま殺すのは忍びないですからね。チャンスをあげますよ」
「チャンス……?」
イグルスはおもむろに銃の1丁を、俺に投げて寄こした。
俺の足元に転がって来たそれを凝視する。
「どういうつもりだよ」
「それで私を撃てば、あなたも唯さんも助かるかもしれませんよ?」
「……ちょっと待ってくれ。もしこのまま何もせずに、唯が死ぬはずだった時間が来たらどうなるんだ?」
「そんな事心配しなくてもいいんですよ。その時間が来る前には、決着がついてるでしょう」
イグルスは、手に持っていた銃をこちらに向けて構える。
俺は躊躇っていた……
イグルスの意図が、全く読めなかったからだ。
「イグルス……1つだけ教えてくれ」
「答えるかどうかは解りませんが、聞きたいならどうぞ。言える事なら教えてあげますよ。冥土の土産に」
「何故、俺と唯を撃った?何故、俺を消滅させようとする?」
イグルスは口角を上げ、俺を見下す様に笑って喋り始めた――