お兄ちゃんは悪魔サマ
「悪魔には通常の契約とは別に、裏契約なるものが存在するんですよ」
「裏……契約……?」
「ええ。もっとも、この存在を知っている悪魔は殆どいませんが」
「お前がその契約をしてたってのか?」
「そうです」
イグルスが語った裏契約の内容は、俄(ニワ)かには信じがたいものだった。
それは魔王の娯楽の為に自ら行動し、見返りを求める……というものだ。
今回のこの娯楽とは、お互いを助けようと死に物狂いで行動してきた俺達を、落としめる事……
「俺を消滅させた後は、どうするつもりだよ……」
「唯さんが目を覚ましたら、あなたが消えた事実を告げます。私が止めを刺した事も」
「んな事してどうなるんだよ」
「唯さんが知ったら、さぞショックを受けるでしょうね。そこを狙って時間をかけてジワリジワリと彼女を追い詰めた後……彼女にも消えてもらいます。そうする事で、消えたあなたも浮かばれないままという訳です」
歯を食いしばりながらイグルスの下らない話を聞いていた俺は、唯にまで手を出すと言った言葉を聞いて、思わず目の前にあった銃を手に取った……
怒りと痛みで熱を持つ体に、鉄の冷たさが沁みる。