お兄ちゃんは悪魔サマ
「最初からそのつもりで俺を悪魔にしたのか!?」
「そうだ……と言ったら?」
「……俺と唯を犠牲にして、お前が得るモノって何だよ」
「安らぎ……ですかね。私も元は欲にまみれた人間だった訳ですし、消滅はしたくありません。でも、長い間悪魔として過ごしてきて、いい加減疲れたんですよ」
イグルスの求めてる安らぎがどんなものなのかは、たかだか数ヶ月だけ悪魔になっていた俺には解らない。
数百年と悪魔でいる事がどんなに大変な事なのかも。
それでも、もし本当にそんな理由で俺たちの事を弄んでいたなら……コイツを許す訳にはいかない……
俺は右手に持った銃のスライドを、ゆっくりと左手で引いた。
そして、銃口をイグルスの頭部に向ける。
一発で仕留める為に狙うのなら、ここしかない……
「陵に撃てますか?この私を」
「撃ってやるさ……!」
強がってそうは言ってみるものの、何故か手が震えていた。
エネルギー不足とか、そんなんじゃない。
いくら口にはしてみても、心がイグルスを撃つ事を拒否していた……