お兄ちゃんは悪魔サマ
「強がりはいい加減やめにしたらどうですか?手が震えてるのが、ここからでも解りますよ?」
現在の俺とイグルスの距離は、わずか4、5メートルしかない。
イグルスも俺に銃を向けている。
俺は右手のみで構えていた銃に、左手を添えた。
あとはトリガーを引くのみ……
長い……長い沈黙が続いた。
俺もイグルスも、お互いから目を逸らす事なく相手の姿を捉えていた。
「何故……撃たない?」
「…………」
「弱った俺を消滅させるのなんか、ちょろいもんだろ?」
「そんなに死に急ぐなら、望みどおりにして差し上げましょう」
そう言った次の瞬間、イグルスは躊躇いもなくトリガーを引いた。
その時、防衛本能とでも言うのだろうか。刹那に、俺もイグルスに向かって銃を撃っていた。
ほぼ同時だった為、響き渡った銃声は1発……
撃った瞬間に思わず目を瞑った俺は、その衝撃を覚悟して身を強張らせていた。
でも……何も感じない……
その数秒後、ドサリと音が聞こえ思わず顔を上げる。
「どうして…………?」