お兄ちゃんは悪魔サマ



俺は瞬時に、イグルスの放った弾の位置を確認した。
その跡は、俺の左側後方にあった。


この至近距離で、しかも先に撃ったのはイグルスという状況で、俺に当たらなかったというのは考えにくい。

つまり……当たらなかったんじゃなくて、当てなかったという事だ。


俺はイグルスに駆け寄った。
そして、うつ伏せに倒れたイグルスを抱きあげる。




「何でだよ……何故わざと外した?俺を消したかったんだろ?」

「わざと……?違います……よ……、当たらなかった、だけ……です」

「見え透いた嘘ついたって、バレバレだっつーの……。なぁ、教えてくれよ……」



こうしている間にも、俺が撃った弾が貫いた場所から、止めどなく溢れる血液……

それは俺から見て、イグルスの鳩尾の少し左上辺り。
体のつくりなんてよく覚えてないが、何となく記憶にあるのは、ここらには肝臓とか肺があるだろうって事くらい。


一向に治る気配のない傷口に、またしても疑問が浮かび上がる。




「イグルス……お前エネルギーがないんじゃ……」




イグルスは何も答えなかった。
でも十分なエネルギーがあるならば、一発で消滅しない限り、すぐに傷は治っていく。









もう、バカな俺でも解るくらい明確だった。

イグルスはわざと撃たれたんだと。


そして、このまま消えるつもりなんだろうという事も――




 
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