お兄ちゃんは悪魔サマ
*消えた記憶*
どこか、真っ白でふわふわとした空間の中に居た。
体はとっても軽くて、まるで雲の中を歩いているような気分だった。
居心地がよくて、ずっとここに居てもいいなぁなんて思ってた私を誰かが呼んだ……
『唯を愛してる……』
アイシテル……?
誰だろうと考えてみても、思い出せない。
でも、何だかここにいちゃいけない気がして、声のする方に歩きだした。
声が聞こえなくなっても、ずっと歩いた……
しばらくして、突然右手がフワッと暖かくなったの。
そしてポタリと何かが滴り落ちる感触がして、私は目を開いた……
誰かが居る気がしたんだけど、誰も……いない?
「唯……?唯?」
ふと聞こえた声に視線を動かすと、そこには悠哉先輩がいた。
声にならない声で、先輩と言ってみる。
「せ、先生呼んでくるから待ってろ!」
そう言っていなくなった先輩。
何かが靄がかったような頭と向き合えなくて、私は再度目を閉じて眠りについた……