お兄ちゃんは悪魔サマ
*悠哉side*
唯が回復するにつれ、おかしな事が解った。
唯の中に陵さんの記憶がない……
悪魔になった時だけとか、そんな断片的な事ではない。
羽村 陵という人間そのものの存在がないんだ。
つまり、唯も唯の両親も、唯は一人っ子だと思っている。
それは唯の家族だけじゃなく、周りの人間も例外じゃない……
八城先生と紗香は悪魔だから別としても、俺と尚哉は人間にも関わらず記憶が残っている。
それは俺達がハンターの血筋だから……だろう。
それしか考えられない。
「陵は本当に消滅しちまったのかな……」
「俺は、目の前で消えるところを見てしまったからな。でもどちらかと言うと消滅ってより、昇天したって方がしっくり来る感じだったんだが……」
「昇天……。まぁある意味そうなんじゃねぇの?唯は助かったんだからさ」
「まぁそうなんだが……」
学校が終わり日が沈みかけた夕暮れ、俺の部屋で尚哉と2人この話を何度もした。
まぁ結局はこの結論に達するんだが、何故か納得いかない俺が居た。
唯が入院してから半月程が経った時、俺は八城先生を訪ねてみる事にした。