お兄ちゃんは悪魔サマ
 


先生……とは言っても、彼は既に学校を辞めてしまっている。

その意図するところはよく解らないが、唯が撃たれて陵さんが消えた後に学校に行くと、もう辞めていたのだ。



俺は八城先生に連絡を取り、マンションを訪ねた。

そして部屋に上がると、違和感を感じた。いや違和感というか、もはや明確におかしい……



部屋にはほとんど物がない。
生活必需品さえ見当たらない。

まぁ、悪魔の必需品なんて解らないんだが。

それにしても何もなさすぎる……


疑問を抱えた俺に答えるように、八城先生が口を開いた。




「また移動する事に決めたから」

「え……?」

「基本的にしんみりするのは、性に合わねぇんだよ。1つの事柄としっかり向き合うのもな。まぁ楽して生きるのが俺の生き方だから」

「……俺は向き合います。唯にできるだけの事をしてやりたい」




真剣に話す俺を見て、フッと笑みを浮かべた八城先生。そしてお前らしいな、と一言。

先生はリビングにある大きな出窓に近づくと、空を見上げた。
俺のもやもやとした心とは反対に、空には眩しいくらいに太陽が輝いていた。





「陵からお前らに伝言がある」

「陵さんから……?」

「ああ。イグルスと対峙する直前に、俺に託していったメッセージだ。聞くか?」




俺は力強く頷いた。




 
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