お兄ちゃんは悪魔サマ
  


先生はこちらを向くと、タバコを取り出して吸い始めた。

そして白い息を2、3度吐き出した後、話し始めた。




「まずお前から。一言一句まで正確に覚えちゃいねぇから、俺なりに話すが許せ」

「はい」

「要点は唯を頼むって事だったが、唯の中に居る幻影の俺に負けるな……だったか?陵は、まさか自分の生きてきた時の存在まで消えるとは、思ってなかったんだろうな」




確かに、今の唯の記憶の中には陵さんはいない……
でも、その言葉は俺にズシッと重く響いた。

記憶にはなくても、心にはきっと残ってる。あれだけ強い想いを持っていたんだから……





「八城先生、悪魔が消滅する時は、今回の陵さんのように生前の存在まで消えてしまうんですか?」

「いや……それは俺にもひっかかっていた。こんなパターンは初めて見たからな」

「何か意味がありそうですね」

「まぁ頑張って見つけてみろよ。言っとくが、俺は知らねぇし調べるつもりもないぞ」

「解りましたよ……」




八城先生は、自分なりに今回の事にケリをつけたんだろう。

俺は……俺は唯の傍に居る限り、囚われ続けると思う。それもまた自分で選ぶ事だ。






今は唯の傍に居てやりたい。



 
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