お兄ちゃんは悪魔サマ
「それから尚哉にだ。恋する事を恐れるな。俺は後悔はしていない。だとさ」
「恋……?尚哉に?」
「紗香とだろ」
「…………は?」
空耳か……?
尚哉と紗香が恋!?
この伝言を預かったものの、にわかには信じられずに半信半疑だった。もしそれが本当なら、あいつらは決して幸せにはなれないって事か……?
「悠哉、幸せは他人が決めるもんじゃない。自分が決めるんだ。例えあいつらが普通に結婚して、子どもを生んで家庭を持つ事は出来ないとしても、それでも一緒に居る事の方が幸せかもしれないだろ」
「先生……」
「お前もだろ?唯を忘れて、別の誰かと付き合った方が楽だろう。陵の幻影に囚われる事も、悩む事もなくなる。だからと言って唯から離れるか?」
先生の問いに静かに首を振る。
自分の幸せは他人が決めるものじゃない……か。
じゃあ唯の幸せは?陵さんを忘れたままで幸せなのか?
あれだけお互いを想い合っていたのに、その想いが消えたままでいいのか?
八城先生にお礼を言ってマンションを後にした俺は、ひたすら悩んだ。
悩んで悩んで、1つの結論を出した……