お兄ちゃんは悪魔サマ



何にもない部屋の真ん中に、1人ぽつねんと座っていた。

体育座りをして膝の上に両手ををおいて、そこに顔を乗せる。




「お兄ちゃん……陵……」



座ったまま窓から見える空を眺め、何度も繰り返し呼んでみる。そして空が暗くなり始め、私は少し微睡んでいた。

幾度目か、崩れそうになる体制を直した時だった……




『俺は誰よりも唯を愛してる。唯……幸せに…………』



ふと聞こえた声に眠気は吹っ飛び、慌てて起き上がって部屋を見回す。

誰も居ないと解ると、窓を開けて身を乗り出して見渡してみる。


けれども、やっぱり誰もいない……





訳が解らないまま涙がこみ上げてくるのは、何回目だろう……

あなたは誰……?








少し落ち着いた私は自分の部屋に戻り、手帳を開いてみた。日記なんて書いてないけど、所々に予定が記されている。

特に気にもとめなかったけど、よくよく考えてみれば不思議な事があった。


誘拐事件に巻き込まれて撃たれる前、私は無断で学校を何日か休んでいる。

そしてお母さんを無理やり説得して(よく覚えてないけど……)おばあちゃん達に会いに行ったり、何故か憎むべき父親にまで……





この時の行動を辿ってみれば、何か解るかもしれない。

そんな予感がして、私は手帳を片手に決意を固めた。



絶対に思い出してみせる……!




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