お兄ちゃんは悪魔サマ
目的を決めた私の行動は早かった。またも強引に心配するお母さんを説き伏せ、翌日には学校なんて無視しておばあちゃんの所へ。
おばあちゃんの家には前回も1人で訪ねたはずなのに、至るところで何かがひっかかった。
それは、私に幸せなようで寂しいような、不思議な気持ちにさせた……
結局確かな記憶は戻らなかったけど、忘れている事が大切なんだという事は解り、それを胸に次の目的地に向かう。
そして最後にやってきたのは、大きな邸宅の前。
確かここで誘拐されたんだっけ。
それも覚えてないけど。
私は一呼吸してチャイムを鳴らす。私が名前を告げると、しばらくして沙希さんが小走りでやって来た。
「突然でびっくりしました。唯さん、もうお体は大丈夫なの?」
「ええ。お陰様でもうすっかり」
「良かった……。あ、こんな所で立ち話もなんですから、お茶でも如何かしら?」
私は急いでいる事を伝えて、単刀直入に聞きたかった事を切り出した。
実は、誘拐されて監禁されていた場所を私は知らない。私自身の記憶にないし、別に聞こうとも思わなかった。
でも、今はその場所に行かなきゃならない――
強くそう思っていた。