お兄ちゃんは悪魔サマ



目的を決めた私の行動は早かった。またも強引に心配するお母さんを説き伏せ、翌日には学校なんて無視しておばあちゃんの所へ。



おばあちゃんの家には前回も1人で訪ねたはずなのに、至るところで何かがひっかかった。

それは、私に幸せなようで寂しいような、不思議な気持ちにさせた……



結局確かな記憶は戻らなかったけど、忘れている事が大切なんだという事は解り、それを胸に次の目的地に向かう。











そして最後にやってきたのは、大きな邸宅の前。

確かここで誘拐されたんだっけ。
それも覚えてないけど。


私は一呼吸してチャイムを鳴らす。私が名前を告げると、しばらくして沙希さんが小走りでやって来た。




「突然でびっくりしました。唯さん、もうお体は大丈夫なの?」

「ええ。お陰様でもうすっかり」

「良かった……。あ、こんな所で立ち話もなんですから、お茶でも如何かしら?」



私は急いでいる事を伝えて、単刀直入に聞きたかった事を切り出した。

実は、誘拐されて監禁されていた場所を私は知らない。私自身の記憶にないし、別に聞こうとも思わなかった。





でも、今はその場所に行かなきゃならない――

強くそう思っていた。




 
< 277 / 288 >

この作品をシェア

pagetop