お兄ちゃんは悪魔サマ
詳しくは説明出来なかったけど、私の様子を察してか、沙希さんはすぐにその場所を教えてくれた。
何故、彼女がその場所を知っていたのか……。それはその監禁されていた場所が、この辺りでは有名な幽霊屋敷だから。
事件直後は、この辺りの住民の間でかなり騒がれたらしい。取り壊しの話にまで発展したんだって。
「唯さん、その場所までここからかなり距離があります。もしご迷惑でなければ、車で送らせて貰えませんか?」
私は少し迷ったけれど、住所を聞いただけじゃ迷う可能性も大だったし、何より早く行きたい気持ちが勝った為、素直に甘える事にした。
その屋敷には、東条家から車で15分程度で着いた。
「ありがとうございました」
「気をつけてね。またゆっくり遊びにいらして」
「はい、そのうち父の居ない時にでもお邪魔します」
沙希さんはクスリと上品な笑みを浮かべ、手を振って帰っていった。
改めて幽霊屋敷を見てみる。
まだ昼間だと言うのに、この屋敷の周りだけ暗い空気に覆われているみたいだった。
あんまりいい気はしない……
しかもこれって不法侵入になるのかな、やっぱ……
まぁ悩んでても仕方ない!
「えっと、確か屋敷の中じゃなくて小さな小屋だったっけ……」
事情聴取なんかで刑事さんから聞いた話を思い出しながら、とりあえずその小屋を探し回ってみる。
そして小一時間ほどだだっ広い庭を歩きまわって、ようやくそれらしき小屋を見つけた。
遠くから見ただけなのに、ドクンと音が聞こえそうな程に心臓が鼓動を打った……