お兄ちゃんは悪魔サマ



徐々に速まる鼓動。

それを鎮める様に胸に手を当てて、ゆっくりと小さな建物に近づく。


入口らしきドアを見つけて、思い切ってそこを開けてみた。
足は踏み入れずに、中を覗いてみる。




「何となく、覚えてる気がする……」



遠い意識の中で、2人の男が喋っているような感覚が甦る……





『これから移動しろだってさ』

『はぁ?こんな夜中にかよ……めんどくせぇなぁ。おい!起きろ!!今から場所を移る事になったんでな。さっさと立て』



……私は意識がはっきりしないまま無理やり立たされて、このドアから外に連れ出された。

するとそこには男の人が浮いてて……。その人も知ってる人だった気がする……


驚いてその人を見つめてたホンの一瞬の間に、私を捕まえていた男がいなくなって、振り向いた……




『お兄ちゃん……?』



自然と体が震えていた。
それは撃たれた時の恐怖だったのか、思い出す事への恐怖だったのかは解らない。

けれど、頭の中にははっきりとその人物の顔が浮かび上がった。


それは紛れもなく、お兄ちゃん……





嬉しかったの。もう死ぬんだって思って怖くて怖くて、そしたらお兄ちゃんが目の前に現れたんだもん。 

驚いたけど、会えた喜びの方が勝ってて、お兄ちゃんに笑いかけようとしてた。


そこから先は覚えてない……



 
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