お兄ちゃんは悪魔サマ
*陵side*
「いいのか……?」
「ああ。いいんだ」
本当は今すぐ抱きしめたい。
涙でぐしゃぐしゃになった顔を両手で包み込んで、もう泣くなよって言いたい。
けれど、それはしちゃいけない……
「最後に唯の顔を見れて良かった。泣き顔だったけどな……。お前には何だかんだと世話になりっぱなしだったなぁ」
「そうだな。借りは来世にでも返して貰うさ」
「お前、生まれ変わった俺が解るのか?」
八城はニヤリと笑ったまま、その問いには答えなかった。
俺は、消滅しなかった……
あの時、イグルスが言っていた裏契約のおかげで。
イグルスが、なぜ俺達を裏切るような事をしたのか。
それはそういう契約を魔王と交わしたから……だそうだ。
あの時、イグルスは俺たちの運命を変える為に撃った。
そして、わざと俺に撃たれて消滅した……
詳しい契約の内容は解らない。けれど、結果として唯は助かり、俺もこうしてここに居る。
もう悪魔じゃないけどな。
俺と八城は唯が歩きだしたのを見届けてから、唯の部屋に向かった。
1通の手紙を届ける為に――