お兄ちゃんは悪魔サマ
最後の目的を果たした俺は、妙に清々しい気分だった。
もちろん唯の事は気がかりだ。立ち直るまでには時間がかかるだろうし、きっとまたたくさんの涙を流すだろう。
でも、唯は強い。
もう俺がいなくても前を向いて歩いていける。
少し、寂しいのは内緒だ。
俺はこの短期間にいろんな経験をした。悪魔になって、唯を愛して、残酷な運命に巻き込まれそうになって……
最後には天使になっちまった。
これもイグルスの仕業だ。
悪魔の場合はずっと悪魔でいるか、いずれ消滅するかしかない。
天使とは、死んだ人間が生まれ変わる前の状態。
つまり、俺は転生できる……
どこまでも人の良いイグルスの考えそうな事だった。
そんなイグルスを最後まで信じられなかった事が、唯一の心残りかもしれない。
それでも俺も前に進まなきゃいけない。
転生は何年後、何十年後、何百年後、何千年後、いつになるかは誰にも解らない。
それでもいつかまた、唯と会える事を願う。
また出逢えるなんて奇跡が起きたら、今度こそしっかり守ってやるからな……