お兄ちゃんは悪魔サマ



最後の目的を果たした俺は、妙に清々しい気分だった。

もちろん唯の事は気がかりだ。立ち直るまでには時間がかかるだろうし、きっとまたたくさんの涙を流すだろう。


でも、唯は強い。
もう俺がいなくても前を向いて歩いていける。

少し、寂しいのは内緒だ。





俺はこの短期間にいろんな経験をした。悪魔になって、唯を愛して、残酷な運命に巻き込まれそうになって……

最後には天使になっちまった。



これもイグルスの仕業だ。

悪魔の場合はずっと悪魔でいるか、いずれ消滅するかしかない。

天使とは、死んだ人間が生まれ変わる前の状態。




つまり、俺は転生できる……



どこまでも人の良いイグルスの考えそうな事だった。

そんなイグルスを最後まで信じられなかった事が、唯一の心残りかもしれない。




それでも俺も前に進まなきゃいけない。
転生は何年後、何十年後、何百年後、何千年後、いつになるかは誰にも解らない。





それでもいつかまた、唯と会える事を願う。

また出逢えるなんて奇跡が起きたら、今度こそしっかり守ってやるからな……



 
< 282 / 288 >

この作品をシェア

pagetop