お兄ちゃんは悪魔サマ
「あんたはさ」
「ちょっと待って!あんたってやめない?唯でいいから」
「解った」
ちょっと驚いたように私を見て、はにかんで返事をする尚哉くん。
お兄ちゃん好きな所といい、ただの男の子にしか見えない。
「唯はさ、唯の兄ちゃん……陵の事、好きなのか?」
「…………うん」
「それは兄として?男として?」
「どっちも……かな」
「……陵は、唯の気持ち知ってんのか?」
私はコクンと頷いた。
「あの、さ……」
そう尚哉くんが口を開きかけた時だった。
「見つけたぞ……はぁ、はぁ、尚哉も唯も何考えてんだよ……!」
「兄貴!?」
「先輩!?」
突如聞こえた声に振り向いた、私と尚哉くんの声がハモった。
目線の先には、息をきらして額に汗が滲む先輩の姿。
きっと必死に走り回って私達を探してたんだろう。
「兄貴、ココがよく解ったな」
「はぁ、はぁ……尚哉の行きそうな所なんて、想像つく」
尚哉くんは嬉しいのか、ちょっと顔がにやけてる。
必死で隠そうとしてるけど、バレバレ!
「兄貴〜帰ろうぜ」
「は!?俺は唯に用があって……」
「ハイハイ」
尚哉くんはまだ肩で息をする先輩を、ヒョイッと抱き抱えた。
「な、尚哉っ!下ろせよ!!何ふざけた事……っ」
「兄貴〜あんまり騒ぐとキスするぞ」
その言葉にピタッと動きの止まる先輩……
尚哉くんには敵わないと解っているか、顔が青ざめていく。
「ななな尚哉、お前……」
「唯、また後で連絡するよ。じゃあな〜」
そう言って先輩は尚哉くんに抱き抱えられたまま、帰って行っちゃった……