お兄ちゃんは悪魔サマ
「お兄ちゃん、解るの?」
「解るさ。一度戦ってるからな」
お兄ちゃんの表情は、依然厳しいままだ。
「あのね、尚哉くんって言うんだけどお兄ちゃんにはもう手は出さないって約束してくれたの」
「そんなの、あてになるかよ」
頭ごなしに否定するお兄ちゃんに、少しムカッとした。
確かに一度怪我を負わされて、危うく消えちゃう所だったけど……
「でもよく知りもしないのに、最初から否定するのは間違ってる」
「……唯、やけにソイツの肩を持つんだな」
「なっ、違う!尚哉くんは私を助けてくれたし、お兄さん想いの優しい子だから」
「助けられた……?」
しまった……っ。
つい口を滑らせちゃった……
お兄ちゃんの顔は益々強張っていく。
……先輩の事は、何も知られないようにしなくちゃ。
お兄ちゃんの為に私が犠牲になろうとしたなんてバレたら……
「どういう事だよ」
「……お、お兄ちゃんには関係ない」
「あ〜そうかよ。んじゃ知らね」
せっかく兄と妹に戻ると決めて、今日からまた一緒に生活するのに……
お兄ちゃんに心配かけたくないだけなのに……
そして、知らない所で重大なすれ違いが起こっていたなんて、私達は全然気づいてなかった……