お兄ちゃんは悪魔サマ
気を取り直して両親の寝室へと歩く。部屋の近くまで来ると、中の会話がしっかり聞こえた。
怒鳴り合いをしてる声は不快にしか感じられず、耳を塞いでしまいたかった。
でも聞かなきゃ……!
私は意を決しドアをノックした。
中の声がピタリと止まる。
「お母さん、お父さん、唯です。ちょっと話しが聞きたいの」
ドアは静かに開けられた。
一目見ただけで、何とも居心地の悪そうな雰囲気が見てとれた。
「唯……」
お母さんはちょっと困惑気味。お父さんは機嫌が悪いのが目に見えて解る。
「こんな時間に何してる。早く部屋に戻りなさい」
「…………離婚するって本当?」
私が離婚の二文字を出すと、お父さんの周りの空気が変わった。
「母さんに聞いたのか……?」
「……うん。昼間に少し」
「離婚はしない。母さんが勝手に言ってるだけだ」
お母さんは黙ったままで何も言わない。お父さんは離婚する気はないって事……?
「こんな風に喧嘩するのは、お兄ちゃんがいなくなっちゃったから……?」
私の質問に、胸ポケットに居るお兄ちゃんが反応したのが解った。