お兄ちゃんは悪魔サマ
「……違うわ。陵は関係ない。元々お母さんもお父さんもいろいろあって……。確かに陵の事故があった事で、私達夫婦の亀裂が浮かび上がるきっかけにはなったかもしれないけど、あくまできっかけと言うだけ。あの子のせいじゃないわ」
口を開いたのはお母さん。
やっぱりお兄ちゃんのせいじゃないよ……?
そんな想いを込めて、私はそっと胸ポケットを撫でた。
「元はと言えば、お前がちゃんと陵を見ていなかったからあんな事故なんて起きたんだ!!」
「……仕事仕事で、家族は二の次だったあなたには言われたくありません」
「何だと!!?」
「ああ……仕事仕事じゃなくて、仕事、女、女……かしら?」
お父さんの言葉からまた始まった言い争い。
私の存在など忘れ去られているみたいだ……
お互いが、お兄ちゃんが死んだ責任の擦り合いをしてるだけ……
「うるさい!!結局2人とも自分の事ばっかり。私の気持ちも、死んだお兄ちゃんの気持ちも何一つ考えてない」
止まる気配のない争いに、私はキレて2人を睨み付けて言った。
「離婚でも何でも勝手にすればいい。私はどっちにもついていかない」
私はそう吐き捨てて部屋を後にした。それでもすぐに始まる口喧嘩に、耳を塞いで部屋へと急いだ。
私にはお兄ちゃんだけ……
私のお兄ちゃんに対する依存度は、この日を境に強くなってしまった。
兄として?男として?
それは解らない……
でもお兄ちゃんさえ居てくれればそれでいい……