お兄ちゃんは悪魔サマ
「兄貴も陵も何だぁ?俺が来るまでに何かあったのか?」
私は、お兄ちゃんの生前を知ってる人に会った事を話した。尚哉くんはパンを片手に話しを聞いてる。
「へぇ……陵の彼女だった人だったりして」
胸がズキッと痛む。それは、私もすぐに思い浮かんだから……
尚哉くんは落ち込んだ私を見て、少しバツが悪そうな顔をしてる。
「ごめん……俺、無神経だった」
「ううん。私もそうかもって思ってた所だし……」
尚哉くんは残りのパンを口に放りこみお茶で流しこむと、真剣な眼差しでこちらを見てきた。
「なぁ……唯はさ、陵の事好きなんだろ?」
「それは……」
「何かさ、唯も陵もお互いの気持ちを押し殺してんのがすげぇ解んだよ」
私は驚いて尚哉くんを見つめた。
「一度、素直に全部気持ちをぶつけてみれば?思ってる事全て」
「気持ちをぶつける……?」
「いくら血の繋がった兄弟でも、所詮は他人。言わなきゃ解らない事たくさんあるぜ」
それから尚哉くんは先輩との間にあった、わだかまりについて話してくれた。
望んでも力のない先輩。
長男としてのプライド。
望んでもいないのに力に恵まれた尚哉くん。
常に先輩から距離をおかれ避けられてきた事。
「何もかもぶつけてようやく相手の気持ちが解った。だから唯も一度頑張ってみろよ?」