お兄ちゃんは悪魔サマ
「はぁっ!?アイツ自分だけ逃げやがった!」
違うと思うよ、お兄ちゃん……。なんて突っ込みは、敢えてしないけど。
「じゃあ次の方、先にお進み下さい」
何かカードみたいな物を渡されて先へ促される。
私は、少し躊躇ってるお兄ちゃんを置いて先に進んだ。
「ちょ、ちょっと待てよ!」
「んもぉ〜早くしてよ!!」
お兄ちゃんは私の後ろをビクビクしながらついて来る。
普通逆じゃない!?
このお化け屋敷はただ歩いて進むだけじゃなくて、渡されたカードを使って扉を開けたり、次の鍵を探したりするタイプ。
少し広めのフロアに出て次の扉の鍵を探す。すると、お兄ちゃんが声をかけてきた。
「唯……何か機嫌悪いよな」
「別に……」
………お兄ちゃんから匂う香りが嫌で、なるべく離れてた。その事を考えると、辛くなるから……
「いいからお兄ちゃんも鍵、探してよ」
「何を怒ってる……?」
「怒ってはない。ただ、お兄ちゃん香水臭いから近寄らないで欲しいだけ」
「唯……」
私はお兄ちゃんを避けるように、鍵探しを続ける。
するとお兄ちゃんは突然、私の腕を掴んだ。
「いたっ」
強い力に思わず顔が歪んだ。それでもお兄ちゃんは、掴んだ腕を放そうとはしなかった。
「お兄ちゃん、放して」
「……嫌だ」