お兄ちゃんは悪魔サマ
「俺から香水の匂いがするのが嫌って言ったな?」
「だから何?」
「気にしてるのか……?」
「別に……」
香水だけじゃない。お兄ちゃんの名前を呼んだあの女の人の事も、凄く気になる。
素直になりたい私。
素直になれない私……
「唯は……」
「え……?」
「唯はあの悠哉ってガキと、また付き合うのか?」
「お兄ちゃんにはどうでもいい事でしょ!?」
「どうでも良くなんかっ……」
お兄ちゃんが強く手を引っ張った。今まで顔を逸らし続けた私の目の前に、お兄ちゃんの顔が来る。
私は両手を捕まれて、動けなくなってしまった……
少し動けばキスできそうな程の距離にあるお兄ちゃんの顔。薄暗い空間でもはっきりと見える。
こんな時にさえ、ドキドキしてしまう私……
お兄ちゃんの視線は私を捉えたまま動かない。
私もまた、動けなかった……
そして、それは突然だった。
お兄ちゃんが私を引き寄せ、唇を奪う……
「んんっ!?…やっ……んっ」
それは、何もかもを吸い取られてしまいそうな程の激しいキスだった。
頭のどこかでダメだと思いながら、心のどこかで嬉しく感じる……
やっぱりお兄ちゃんが好き……
後の事なんて考えられなかった。
今だけは、この感覚に酔いしれていたかった……