ぼくらの事情

ニヤニヤしながら軽くあしらう架を、響生は悔しげに睨み付けるばかり。



いつものパターンに、いつもの架に戻ったと小さく安堵の溜め息をついた後、


「まぁ、押し倒すのは無いにしても、ちゃんと慰めてあげないといけないね。ここちゃんのコト」



こう言って、響生の肩をポンと叩いた。



「響生が無理なら俺が絆嬢を優しく慰めたげるよ」


「架が言ったら洒落になんないから……」


にっこりと食えない満面の笑みを浮かべた架に、ドコまでが冗談なのかが読めず咲奈の顔はやや引きつっている。



そんなやり取りを一瞥し、響生は去り際に一言だけ澪路が残していった言葉を思い出していた。




「響生」


「……なんだよ」


振り向き様に呼ばれてそちらを向けば、


「おまえは絆が望んでないって言ったけど……最近、絆が学校の話するんだよ。楽しそうに」


「えっ?」


「だから、頼むなっ」



思わず聞き流してしまいそうなくらいサラッと言われた言葉に、今更になって実感が湧いてくる。



慰め方なんてわからないけど、もし絆が必要としてくれたなら……自分は間違いなく手を差し伸べるだろう。


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