ぼくらの事情

「不器用……って言ったら聞こえは良いけど、響生のはなんか鈍くさい」



カッコ悪い呼ばわりの次は鈍くさい。



好きな女の子に言われて喜ぶ男など、きっと居ない。


居たとしたら、多分ドMの言葉責めプレーヤー。



もちろん響生にそのっ気はないので、思い切り不愉快で仕方ないって顔で絆を見下ろしている。



挙げ句は、



「オマケにキス魔だし」


「ばっ! だからそれはっ!」



何とも不本意な、でもあながち否定も出来ない称号まで与えられる始末。



確かに、カッコ悪いし鈍くさい。



頭の片隅で、小さく繰り返し囁く自分が居た。



響生の顔がすっかり気落ちした情けないヘタレた表情になった時、


「でも、ありがと」

「えっ?」


「自分のコト、好きだって言ってくれる人が居るって……幸せだねっ」



こう言って絆は、ふわっと柔らかく笑う。



それで一気に心拍数は跳ね上がり、ヘタレた顔は驚きでパッと見開いた目で絆を見つめていた。
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