ぼくらの事情
そして次の瞬間には絆の右手を捕まえ、
「俺は、諦めねぇからなっ!」
張り上げた声で真っ赤になりながら宣言された言葉は、
「聞いたよ、それっ」
いつかの生徒会室で言われた光景を、絆の頭の中に蘇らせた。
「だって、あん時のは意味わかってなかっただろっ」
慌てて言い返す響生にクスクスっと笑いを零し、
「うん。でも、もうわかったよ……ちゃんと覚えとく」
掴まれていた右手で、ギュッと響生の手のひらを握り返してみせた。
照れくささの絶頂で視線を絆から逸らし、響生は思う。
……カッコつけて答えは要らないなんて、言うんじゃなかった。
ものの五分もしないうちに後悔し始めた響生は、絆にバレないように小さく溜め息をつくのだった。